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ザ・コントラクターの2秒前のレビュー・感想・評価

ザ・コントラクター(2022年製作の映画)
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クリス・パイン演じる主人公が海兵隊からの除籍を告げられる場面。彼が入室してから上官たちの前に移動し敬礼するまでの所作をじっくり捉えているのが良い。幼少期に彫った星条旗の刺青と同じく、兵隊としての生き方がどうしようもなく身体に染みついてしまっている哀愁。

また、彼に妻が海兵隊仲間の訃報を伝えにくるシーンも良い。屋根の上と下という位置関係が面白いし、死因が自殺だと仄めかしつつ妻が彼に抱いている不安へスライドさせていく語り口も上手い。

だが何より彼とベン・フォスターの家族を通して、退役兵隊が「家族」に対して持つ責任(だが家族は必ずしもそれを望んでいない)を描いているから、中盤である人物が主人公に助力する展開に説得力がある。

ターゲットの科学者まわりの描写を疎かにしていないのも美点。彼もまた科学者という身分は違えど、パインやフォスターと同じく己の責任ゆえに家族の元への帰郷が困難になっている人物であることが後にわかる。タブレットのパスワードヒントで人柄が浮かび上がる演出は初めて観たな。
あくまでパインが遺族にとって恐怖の対象であることを示す玄関口での圧迫的なやりとり。車内で銃を向ける、隠す動作で端的に心情を表すのはありきたりだか、それゆえに好印象。

隠れ家でのエディ・マーサンとの会話も素晴らしいのだが彼もまた己の性分故に家庭への帰郷を諦めた男なわけで、この主題の一貫性に打たれたからこそラストはもう少し苦くても良かったのではと思う。

ああ、あとアクションシーンが少ないながらもどれもよかった。白眉はベルリンでの銃撃シーンだと思うが、まずロケーションが素晴らしいし、パインが川に飛び込むというアクションにタメが無くてアッと驚かせてくれる。
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