KOTAYOSHIDA

ピンク・クラウドのKOTAYOSHIDAのレビュー・感想・評価

ピンク・クラウド(2021年製作の映画)
3.5
コロナ禍の制限された生活を過ごして気付いた事があって、それは「あぁ多分人っていうのは自分の人生というものに本当は意味が無いという事に心の何処かで気付いていて、その無意味さから逃避する為に休日の日に遊びに出かけたり、何かしらの楽しいと認識されている事でスケジュールを埋めて過ごしているのだろうな」という事で、そのある意味での「逃避」をごっそり削いでみると本作のような事になる、家の中での生活にこそ人生の本質があるのではないか。この映画を観て感じた事はそんな事だった。

自分はそういうレジャーに全く興味が無い人間なので、仕事が終わって帰れば映画を観るか音楽を聴くか本を読むかで休みの日も軽く仕事をして映画館で映画を観れれば満足な人間でずっと1人で過ごしているので正直コロナ前とコロナ後で生活面で変わった事はマジでほぼ無く、そういう意味で逆にこれくらい広い家だったら家から出なくても全然良いなとも思ってしまった。

そしてピンクの雲、個人的にはこの社会に蔓延する男性優位社会の圧力のメタファーのように感じた。主人公でもあるジョヴァナは自分の子供は要らないという強い意志を持っていてかなり自由に生きる人であったが、家から強制的に出られない状況に追い込まれてしまい、子供ができ母になってしまう。この既存の良き家族像というものに押し込めようとする力はまさに未だ世界に蔓延している社会の女性に対する圧力そのものではないだろうか。そしてその社会の圧力がフワフワしたピンク色をしている事も皮肉が効いていたと思う。

現実の世界でも有毒なピンクの雲は未だ世界を覆っている。
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