ピンク・クラウドの作品情報・感想・評価

『ピンク・クラウド』に投稿された感想・評価

KUBO

KUBOの感想・評価

3.2
今日の試写会は『ピンク・クラウド』マスコミ試写会。

10秒触れたら死んでしまうピンクの雲。雲と言っても人間の背丈ほどの低さに垂れ込めてくるピンククラウド。

突然起こったこの現象に、外出禁止令が出され、実質上のロックダウンのような生活が始まる。

2017年に脚本が書かれ、2019年に撮られた作品がコロナ禍のロックダウンを予見したかのような作品になっているのが話題の本作は、サンダンス映画祭はじめ世界各国の映画祭で注目され多くの賞を受賞している。

『コンテイジョン』のようなパンデミックものでも、医療ものでも、怪現象を解決しようとする映画でもない。

ただただ、外に出ることのできない世界で、部屋に閉じ込められた男と女のロックダウン下での生活を描いている。

それが何なのか、全くわからないままで、死のピンクの雲が空に浮かぶ世界は、『トワイライト・ゾーン』とか『ウルトラQ』とか『世にも奇妙な物語』みたいな “if” の世界。

ブラジル発のロックダウン・スリラー。公開は2023年1月27日より、全国ロードショーです。
暗い
コロナ前云々がすごいのはおいといて、
今の現実でも問題を直視して向き合う人が苦しんで、問題を見過ごしても生きていける人が楽観的に生きていける
私がこの雲の世界だったら主人公の女性と同じように狂うと思う

カップルで見て意見が割れる(ほぼ割れそう)と最悪な雰囲気になりそうなので1人で見ることをおすすめ
taiko

taikoの感想・評価

3.5
かなり寓話的?なありえないシチュエーションだけど、コロナ禍で観ると、なんだかリアリティを感じる。コロナ禍最初の頃の漠然とした不安とか恐怖とか部屋に篭るしかないところとか、人々とネットだけで繋がっていた状態とか。いろいろ思い出します。
mo

moの感想・評価

4.2

奇しくも現実世界と似通ったシチュエーションで、閉鎖的空間で起こり得る精神異常と倫理崩壊を描いたブラジル女性監督のデビュー作。

とはいえ映画の世界では「10秒間外にいたらしんでしまう」ので現実世界よりハードな監禁生活を強いられているわけだけど…
原因が「美しいピンクの雲」として可視化されるだけでなんだか幻想的な世界に見えるから不思議。


オンラインや仮想現実が現実になっていく過程があまりにもナチュラルで恐ろしい。
感覚の麻痺?環境への適応?
そしてそれを現実として生まれてくる世代が生きる未来を思うともっと恐ろしい。

マッチングアプリなるものが流行して以来、「一期一会」という言葉についてよく考えてしまう。
画面に表示される何十人、何百人の男性をチラと見てはスライドする、この行為も「一会」だろうか。

待ち合わせ場所に向かう間、その人の顔を思い出しながら今日話したいことや一緒に見たいもの、食べたいものを思い浮かべる。
こんな時間があってこその一会だと思うんだけど。


進化は本当に進歩なのか。
いつか私たちは問われる時が来るんだろうなぁ。
sonozy

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3.5
ブラジルの女性監督イウリ・ジェルバーゼ / Iuli Gerbaseの長編デビュー作。
2017年に脚本を執筆、2019年に撮影された本作は、SFであるにもかかわらず、 世界的なパンデミックで一変した現実と重なるという、思いもよらぬ形で世界の脚光を浴びたという。

空に突然現れたピンク色の雲。
海辺で犬を散歩していた少年は雲に包まれると倒れてしまう。
というオープニング。

主役は前夜出会ったカップル。ジョヴァナとヤーゴ。
朝、二人がジョヴァナのアパートのテラスのハンモックでまどろんでいると、外気が危険な状態のためドアと窓を閉めて家に入るよう緊急放送が流れる。
テレビからは、各地に現れたピンク色の雲の詳細は不明だが10秒間で死に至る毒性があるというというニュースが。

ジョヴァナは、友人宅に遊びに行っていた妹ジュリアや、友人のサラと。ヤーゴは、自宅で看護師の男性と過ごしている父と。それぞれビデオ通話で状況を確認する。

ピンク色の雲は数日で消えるだろうと思っていた二人だが、数週間、数ヶ月経っても消えず、食料など生活必需品は窓に設置されたチューブから配給されているものの、カイロプラクターのヤーゴは仕事を失い、Webデザイナーのジョヴァナの仕事で当面をしのいでいる。
しかし、外出出来ない日々は更に続いていく・・・

1階・2階がありそれなりに広そうなアパートですが、室内という閉鎖空間で、一夜限りのはずだった男と女が、数ヶ月、数年を過ごすことになってしまうという、想像するだけでおかしくなりそうな長期間での人間の感情・精神・関係..の変化。
二人に、そして彼らとつながっていた人々に果たして何が起こるのか。。

ピンクの雲という、イメージ的には悪さしそうにない色を毒性の象徴としたのがユニークですね。
この写真のジョヴァナを演じたヘナタ・ジ・レリスの演技がなかなか良かったです。

このレビューはネタバレを含みます

ブラジルの新鋭女性監督、イウリ・ジェルバーゼの初長編映画。毒性のあるピンク色の雲が立ち込め、外に出られなくなった人々を描く。2017年にジェルバーゼが書き下ろした脚本なので、コロナのロックダウンとは無関係。

ミシェル・フランコの『ニューオーダー』を観ても、ブニュエルの『皆殺しの天使』がいかに先駆的だったかがわかる。ジェルバーゼも『皆殺しの天使』をインスパイアされた映画としてあげている。
いつ終わるかわからない災害の中で、様々な選択がある。諦めの早い人や、粘ってみてから諦める人もいるし、すでにピンク色の雲が発生してから生まれた子どもは、また違う考えを持つ。
自分の神経との持久戦でもある。ジェルバーゼは全然宗教をもちこまないが、そっち方面のうるさい話もあるだろう。

単純に、インドア派の人は生き延びやすいと思う。自分みたいに執筆業の人間も、ネットが通じている世界なので仕事もできるし。雲が発生したときにどこへ閉じ込められたかで、条件が色々変わってくるので、ニュースキャスターが日々テレビに出ていたりするのが面白い。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

4.5
【かつての現実がフィクションとなってしまった世界で】
定期的にディストピア映画が作られて話題となる。エッシャーの絵のような無限世界に閉じ込められたカップルを描いた『ビバリウム』やエレベーターで食べ物が運ばれていき、下へ行くほど残飯しか残っていない空間でのサバイバルを描いた『プラットフォーム』は記憶に新しい。またある意味ゾンビ映画もそうだろう。2020年、コロナ禍となり私は『ゾンビの中心で、愛をさけぶ』を思い浮かべた。ゾンビが蔓延する世界で、ステイホームを強いられている夫婦の前に逃亡者が現れ疑心暗鬼になるあたりや、停滞する時間が過ぎ去る質感がどこか今を彷彿させるものとなっている。これもある意味ディストピア映画だろう。さて、今回紹介するのは『ゾンビの中心で、愛をさけぶ』を抽象化させたような作品だ。ブラジル映画『A Nuvem Rosa(THE PINK CLOUD)』だ。Iuli Gerbase長編デビュー作である。本作は2017年に脚本が書かれ、コロナ禍前の2019年に撮影された作品ながら、今の生活や人間心理を恐ろしいほど正確に描写されており、その洞察力の鋭さからche bunbunシネマランキング2022年ベスト候補となりました。早速、詳しく語っていきましょう。

突如、ピンク色の雲が発生する。犬を散歩させていた人は倒れる。ベランダで愛を深め合っているカップルを切り裂くように、不気味な警報がなる。

「窓を閉めてください。部屋にいてください。」

ダラダラとカップルは部屋に入る。そしてテレビをつけると、ピンクの雲により死ぬ人が映し出される。一気に、不可解な出来事が他人事から自分事に変わる。そうです。世界はこの日から変わってしまった。しかし、何十年も普通の日常があったわけだからいつか元の生活に戻れるだろうと思うカップルはその非日常を楽しむことにする。ちょっとしたワクワクが生活にある。例えば、食糧は、窓ガラスにパイプのようなものが繋がれ、そこから取り出すのだ。ビデオチャットで連絡を取り合い、なんとか生活は持続される。

しかし、段々とかつての日常は戻ってこない風潮となっていく。夫はパソコンで「新しいキャリアを始めよう」と謳う動画を見る。また、ピンクの雲により孤独を抱える人に向けたマッチングアプリも作られているらしいことが分かる。『10 クローバーフィールド・レーン』や『ゾンビの中心で、愛をさけぶ』といった家で長時間時間を潰す状況を描いた作品は数多く作られている。『4:44 地球最期の日』のように、2020年代のビデオチャットで孤独を癒す生活を盛り込んだ作品もあるがここまで高解像度で世界が描かれ、しかも現実に即したものとなっていることにただただ驚かされる。

また本作はコロナ禍がさらに長引いた後の世界をもリアルに描いてしまっている。

例えば、夫婦の間に生まれた子どもにとってピンクの雲の世界は生まれた時から日常である。だから、息苦しさを感じることなく、ビデオチャットで会話し、算数の課題もパソコンでこなす。これはコロナ禍に生まれてきた子どもたちにとっての常識を予見しているように見える。そして、妻は戻らぬ生活への渇望からVRに現実逃避する。部屋に砂を撒き、精神の中だけでも旅行を堪能しようとするのだ。

監督はFILMMAKERのインタビューの中で

"Yeah, and it was not just a fiction, but a sci-fi! It’s crazy when you write an intimate, surrealistic sci-fi and then it becomes kind of reality. In the beginning of the pandemic, I had the normal anxiety everyone else did, but also another layer of anxiety, of feeling that my film had become real: “Oh no, now it will be The Pink COVID, not The Pink Cloud.” Ugh—my cloud turned into a terrible virus, you know? And my friends were saying, “At least people everywhere will relate to it.” But I was very nervous.
訳:そう、そしてそれは単なるフィクションではなく、SFだったんですね!?親密で超現実的なSFを書いたら、それがある種の現実になるなんて。パンデミックが始まった当初は、誰もが抱く普通の不安だけでなく、自分の映画が現実になってしまったという不安もありました。私の雲がひどいウイルスになってしまったんです。でも、友人たちは、「少なくとも、世界中の人々が共感してくれるだろう」と言っていました。でも、私はとても緊張していたんです。"

とあまりにも自分の映画が現実になってしまったことに動揺を隠せなかった模様。確かに、実際に観るとあまりにも今を表していて怖くなるのも当然である。ピンクの雲に精神を汚染されて自殺する描写や、コロナ禍における1日の感染者数が一桁になったと思ったら一気に数万人規模にリバウンドしてしまうことへの絶望に近い描写まであるのだから、監督も狼狽することは無理もない。

しかしながら、本作は現実がフィクションとなってしまった世界の心理を代弁してくれる作品であり、脳内のモヤモヤという名の雲を除去する鎮痛剤となり得る。

少なくとも、私は本作を観て今を生きようという気力が出た。自分は一人ではないと勇気づけられました。

日本公開は未定ですが、本作が劇場で観られる日が来ることを心待ちにしたい。

P.S.本作の感想をTweetしたら1,000以上のファボがついた。日本未公開映画でこれだけ注目していただけるとは映画の伝道師として嬉しいものがあります。今後も映画と真摯に向き合って面白い映画を紹介していけたらと思います(誤字があるのは申し訳ありません)。

■FILMMAKERの監督インタビュー記事リンク
https://filmmakermagazine.com/112822-covid-iuli-gerbase-the-pink-cloud/#.YiCjyZPP23I
[コロナ時代の人間生活] 70点

冒頭でこんな言葉が登場する。この映画は2017年に執筆され、2019年に撮影されたものであり、現実とのリンクは偶然である、と。この"現実"とはコロナ禍のことを指している。本作品はSF映画のはずが、その世界が早い段階で現実になってしまったタイプの珍しい映画なのだ。扱っているのはウイルスではなくピンク色の致死性ガスであり、それが突如として充満した世界で、ブラジルに暮らすある男女は唐突のロックダウン生活を迫られることになる。しかも、パーティで昨日出会ったばかりの男の家で起きたその日に。しかし、デパートやパン屋に缶詰になってしまった人もいることを考えると、ベッドやパソコンがある空間に居ることができただけでも最低限幸福と言えるのかもしれないと思えるのが心底恐ろしい。

本作品は冒頭以外同じ家の中で展開していく。代わり映えのしない景色の中で、同じような毎日を繰り返すことで時間感覚が麻痺していく様が、本作品では大胆な時間省略として有効的に用いられている。次の日みたいな感覚で5年位経ってたシーンは流石に背筋が凍った。その間、ヤーゴとジョバーナには息子リノが生まれるが、彼の成長度合いしか時間を測る尺度はない。彼らは自分たちのことを"インドの夫婦"と表現していた。これは、結婚まで一度も会うことなく、結婚して初めて互いを知りながら生活を共にしていくことを指している。しかし、彼らの場合親に決められたわけでもなく、自分たちで決めたわけでもなく、他に誰もいないからという曖昧な理由でなし崩し的な人生が転がり始める。

ここで興味深いのはリノの人生だろう。リノにとって"ピンク色の雲"は生まれたときからそこにある、いわば生活の一部である。だから、スタンタードが一新された世界にも順応している。子供を欲しがったヤーゴはそこを評価しているし、彼の思考はある種の冷徹さを持っていて、ある意味で"ピンク色の雲"のおかげで欲しかったものを全て手に入れたことに満足している。しかし、誰も家から出られないのであれば、両親亡き後の人生は孤独だろうと子供を欲しがらなかったジョバーナは嘆く。確かに彼女の言うことは一理あるのだが、"出来ないことは出来ない"とする父子の姿勢は順応した結果とも言えるので、外の世界を知らないリノにとってはジョバーナの参照する"元の世界"こそ理解を超えているのだろう。

息子リノが成長していくという長い時間の中に、夫婦の関係者の人生も転がっていく。介護士と缶詰になったヤーゴの老齢の父親は、介護士が亡くなってしまったことでボケが進んでいき、同級生宅で缶詰になったジョバーナの妹は、家の持ち主である同級生父が缶詰になった娘の友人を妊娠させたと報告してくる。彼らの挿話や主人公たちの挿話が回収されないのも、未だに続いていて先の見えない閉塞感漂う現実と見事にリンクしていて、陰鬱としてくる。

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