さや

ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~のさやのレビュー・感想・評価

4.3
この前作である「ぼけますから、よろしくお願いします。」と連続で観たら、どこからどこまでがこの作品だったかわからなくなってしまったので、こちらに両方の感想をまとめて書こうと思います。

まず、この二作を通して、家族の仲の良さに感動しました。認知症がテーマの話なので、決して明るいばかりの話ではないのだけれど、この家族のお互いを思いやる姿勢が、物語を素敵に魅せてくれました。
私ごとながら、歳をとって子供を産んだので、こんなふうに子供を育てられるなら、高齢出産も悪くない、と思いました。

そしてさらには、お父さんのお母さんに対する愛情の深さ…。認知症で出来ることが減っていくお母さんをカバーするために、90歳という年齢ながら、今までやったことのない料理に裁縫。最期は寝たきりになってしまったお母さんの元に、毎日通って、元気になって家に帰ろうと声をかけ、さよならのときには涙する姿に、はたして自分はこんなに深い愛情を持てるだろうかと、考えてしまいました。
私の祖母も祖父の葬儀の際に、焼き場から御骨になって出てきた祖父に、おじいちゃん!と大きな声で声をかけ、涙を流していましたが、何十年も連れ添って、世間では大往生と言われる年になってもなお、泣いて別れを悲しむ相手に出会い人生を共にできたというのは、とても幸せなことだと思います。

とはいえ、そんな仲の良い家族でも、認知症はどうしようもない辛い現実を突きつけます。
お母さんが、みんなに迷惑ばかりかけるなら死にたい、と訴えるシーンは胸が詰まり、また、そんなお母さんに怒鳴り返してしまい、後悔するお父さんの姿も、悲しくて可哀想で…本当はお互いを一番に思い遣っているのに、二人の日々を蝕む認知症という病に、怒りを感じました。

人の記憶を壊すという意味で、認知症は他にない病です。
本人も介護者をも蝕む病です。
そんな暗くなりそうな現実を、優しい愛情で魅せてくれた監督とそのご家族に感謝です。
さや

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