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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのAPlaceInTheSunのレビュー・感想・評価

4.0
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私的副題【マルチバースの最果てで愛を叫ぶ】
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2022年4月頃にアメリカで公開されるや、SNSで絶賛の嵐だった。興行収入的にも大成功を収め、A24作品としては、「アンダー・ザ・シルバーレイク」「アンカットダイヤモンド」を抜き歴代1位。
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約一年間待って観た本作、
個人的には「うわぁめっちゃ良かった。最高だったー。」より前に「優秀だなぁ」がくる作品だった。商業的成功、賞レースでの受け、現代的主題の取り入れ方。今の時代にうまく最適化したという印象。
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アカデミー賞で最多ノミネートも納得だし、作品賞も獲りそうな勢い。各賞レースを席巻。
年間ベストどころか2020年代ディケイドベスト10に選出する人も多そう。それもまぁ納得。
ギミック満載な映像表現で楽しませてくれるし、炸裂するギャグで笑わせてくれるし(お馬鹿な下ネタギャグも過剰過ぎずしっかりギリギリ抑制されている)、カンフー・アクションはしっかり見応えある。(ウエストバッグやペットの犬をヌンチャクにしたアクションはミュージックビデオ出身監督らしいなぁと感じさせられる。)
マルチバースという流行りのタームを盛り込みながら、旧来の家族観を問い直してみたり、クイアの若い世代をエンパワーする、応援するしかない展開。
周到に、巧みに練られた作品だと関心しました、はい。
この👀👀👀👀の使い方も、エブリンがチャクラを開眼する場面で使われる訳だけど、
作成途中から👀👀を用いてネットミームにしてバズらせる宣伝方法や、A24作品の得意なグッズ販売も視野に入ってたんじゃないかという戦略が透けて見える。

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特に主題とジャンルの選び方と組み合わせ方には唸らされる。
MCU作品を中心にマルチバース(多次元的世界観)を扱った映画が多数作られている。この作品はマルチバースもの金字塔と言えるものを作ろうという制作者側の野心を感じる。マルチバースの使い方が、語ろうとする主題とマッチしていて巧い。 

いまここに居るエブリンは、数多あるマルチバースで生きるエブリンの中でも、最低。色んな事に挑戦してみたものの、どれも上手く行かず、パッとしない毎日を暮らしている。
他の次元のエブリンは、世界的人気俳優であったり、パフォーマンス系鉄板料理店でコックをしていたりする。
彼女が夢見たもののうまく行かず諦め、あり得たかも知れない自分の可能性の具現でもある。
誰もがそれぞれの人生の中で選ばなかった選択肢の、枝分かれの先にある自分について思いを馳せる事はあるだろう。
この物語では、「バースジャンプ」という手法を用いて、別バースの自分のスキルを持ってきて使う事ができる。うまい設定だ。
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印象的だったのはバースジャンプはかなりのエネルギーが必要で、エネルギーを得る為には突飛な行動をしなければならないのだ。そこで登場人物達がとる行動がシュールで観客を楽しませてくれる。
しかし、この「突飛な行動をしろ!」と言われて笑いを提供する設定が、日本のお笑いカルチャーに慣れ親しんだ者としては、観客には大喜利やクイズイロモネア的なボケ合戦を想起してしまうのだ。欧米の観客には起こらない反応だと思うけどどうなのだろう。
日本のお笑い文化といえば、この「エブリシングエブリウェアオールアットワンス」は全編を通してギャグとパロディの応酬で、コント的な作りとも言える。ぼんやりとした既視感を覚えたのはそのせいかもしれない。
(勿論、この映画が日本のコンテンツと同じだというつもりは毛頭ない。
卓越したデザイン力と構成力、アイデアを纏めて全体をパッケージする力が圧倒的で、それがあってこそ本作の成功というのは大前提で。)
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指がソーセージみたいな形状になり、ボヨンボヨン手を揺らして踊るシーンなんかはコント的な世界のその最たる例だ。
あのシークエンスでは、指では弾けないから足でピアノを弾く事になる。
あれがダメならこれやってみたらいいじゃん! Fu〇k the先入観!みたいなオルタナティブ精神を感じとってグッときた。 
メインストーリーでは税務署の審査官としてエブリンに厳しく当たる彼女が、このバースでは愛し合いブルンブルン踊るというのが可笑しくてマルチバースの妙でもあり、クイアネスの表明と肯定でもあり◎

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話を本題に戻すと、別次元の自分を見て、いまここに居る自分は失敗作の自分ではないかと思い揺らぐエブリン。
夫のウェイブリンが「いまここに居るエブリンの重ねてきた失敗があったおかげで、多次元にいるエブリンの成功があるんだ。」みたいな事を言うんだけど、これが本作の一つの主題だと思う。
多次元宇宙に無数に存在する、あり得たかも知れない、自分の可能性の先の成功例を考えはすれども、でもやはり「いま、ここにいる自分」を肯定してあげる。
ただそこに至る理論が少しとっ散らかってたかな?(鑑賞記憶を遡る…)
ウェイブリンと結婚せず、ジョイが産まれていない別バースを見た時に、職業的・経済的な成功より今の家族が居る事の尊さを実感したという事なのだろうか。

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「2001年宇宙の旅」「レミーのおいしいレストラン」「花様年華」などの映画ファンの顔が綻ぶパロディを盛り込むが、とりわけ愉快なカンフー・アクションの引用元はジャッキーチェンのアクション映画緒作だろう。
ジャッキーチェンのみならず、(主人公家族が中国系移民だから当然だが)この作品にはアジアンカルチャーが有る。
主要登場人物の俳優もが中国系。一部のマニアだけに受ける作品に終わるのではなくそんな作品が興行的にヒットし、賞レースをぶっち切りで勝っていく事に、同じアジア人として胸が熱くなる。
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