木野エルゴ

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスの木野エルゴのレビュー・感想・評価

4.6
父親のゴンゴンと夫のウェイモンドと共に税務署に確定申告をしにきたエヴリン。今日は夜から新年のパーティーもあり、気が落ち着かない。関係があまり良くない娘のジョイのことも心痛の種だし、税務署の担当はいけすかない白人女。何もかも上手くいかない自分の人生に焦りを抱いていたエブリンだったが、税務署のエレベーターの中で人生の転機が訪れる…

いろんな情報源からネタバレ喰らう前に見てきた。これだけはどうしても劇場で見たかった。キー・ホイ・クァンをデカいスクリーンで見たかったから。「インディ・ジョーンズ」と「グーニーズ」でのクァンが好きだったんだよね。可愛くて。見たらクァンのイメージPVか?ってぐらいに色々な姿が見られて満足した。

期待値が高かったから、正直ハズレても仕方ないかなと思ってたけど、予想以上に奇想天外で一瞬も退屈しなかったのが驚き。ストーリーは割と王道だけど、アイデアがふんだんに盛り込まれていて、映像も演出もよく練られてた。VFXを今時のゴリゴリな感じにせず、少し前の時代のアナログな感じにしたのは正解だと思う。役者の良さが生きる。

そして、なんといっても役者が良い。ミシェル・ヨーとクァンがこれでもかってぐらい魅せてくれる。でも個人的には、ジョイ役のステファニー・スーが1番良かった。girl next doorといった感じで普通に友達にいそう。それでいてオーラがある。ドラァグクイーンのように多種多様な服を完璧に着こなしていてちょっと感動した。役者としての器がおっきい。

この作品が性質上、ある一定の層から拒絶反応を示されるのは想像に難くない。でも、個人的には、この作品が誰かを救おうと作られているように感じて、暖かいと思った。

ところで。全体の作風が何かに似てるなと観ている間ずっと考えていた。帰り道でふと思いついたのは今敏監督の「パプリカ」「Perfect Blue」だった。あの荒唐無稽さと映像の賑々しさがよく似ている。そして、登場人物が世間からはみ出した人々というのも、共通のテーマとしてある気がする。「千年女優」はまだ見てない。
木野エルゴ

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