大変映像が美しい海洋映画。多種多様な海洋生物の生活や繁殖をドラマチックな見せ方で表現している。とはいえドキュメンタリーかどうかの線引きは難しいところ。おそらく音は後から挿入したものだろうし、全てが自然な状態を撮影したものというわけでもないだろう。
全体的に海の生物の生態を描いているが、本質的に伝えたいことは海洋汚染と海棲哺乳類全般の捕獲に対しての非難だ。個人的にその「捕獲」部分の取り上げ方に違和感を感じた。
インドシナ半島や南アフリカを植民地下に置いて文化や資産を占領したフランスが自国のしたことを省みずに、他国の文化を非難しているのははっきり言って気持ちのいいものじゃない。しかもサメのフカを消費するのは主に東南アジアだ。欧米(とりわけ白人)がアジアの文化について言及する時、否が応でもそこに蔑視の視線があると勘繰ってしまう。捕獲シーンの直後に絶滅した動物たちを鑑賞する白人の老人と孫を出してくるあたり、かなり意図的なものを感じる。
更にいえば、音楽や編集で撮影対象(この場合は捕獲者)の心象を悪く描くのはフェアではない。彼らにも独自の文化があり生活がある。なぜ捕獲するのかを明示せずに残虐に見える見せ方で(しかもCGで)そのシーンだけを切り取るのは卑怯だ。つーか、ドキュメンタリーを名乗るならCGを使うのは御法度だろう。
あとこれは全ての動物愛護活動に言えることだが、あらゆる動物を家畜化(ペットも含む)している時点で、自分たちが命の線引きをしていることを自覚するべきだ。その線引きが自分とは異なるからといって一方的な方法で悪役に仕立てるのは、何度も言うがフェアじゃない。