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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのoimoのレビュー・感想・評価

5.0
何回も声を出して笑ったし死ぬ程泣いてしまった。

マルチバース物自体が私は正直苦手です。
だけどこの作品の、SF的整合性やカッコイイ画作りなんかよりもキャラクターの内面に寄り添おうとする視点がとても優しくて心地良かった。その優しさがあったから下品な下ネタにも安心して大笑い出来たのかも。




↓↓↓以下ネタバレあり↓↓↓



生きることに絶望してそれを手放そうとしても、生き続ける為の別の答えを教えて欲しくて…つまり愛されていると実感したくて母親に不器用な甘え方をするジョイにも、娘のことを愛してはいても自分のことすらままならず誰にも、自分自身にすらも優しくなれないエブリンにも、心の底から共感出来た。
と共に、レビューを眺める限り賛否両論人によっては意味不明と嫌悪される継ぎ接ぎのような映像としっちゃかめっちゃかのてんこ盛り高速展開は、ダニエル・クワン監督自身が当事者だと公言しておりこの作品の裏テーマのひとつにもなっている"ADHD"の人の脳内をよく再現出来ているんじゃないかと感じた。そういう部分にも当事者が故に共感出来てしまうし、酷評レビューにもまぁそうだろうねと苦笑いしてしまう。こんな万人受けしない作品よく作ろうと思ったしちゃんと実現出来たなと驚愕と感謝の気持ちを感じずには居られない。

だけどADHD当事者じゃなくても、同性愛者じゃなくても、仕事と家事に追われる中年女性じゃなくても多次元世界を行き来する能力を持っていなくても、自分の存在をちっぽけに感じて全てに疲れ絶望してしまっている人は沢山居るだろう。もう無理。消えたい。二度と生まれ変わりたくない終わりたい。私も今まで何回そう思ってきたか分からない。そんな闇堕ちゾンビな私には、"どうして生きるのか”に対するこの作品からの答えが、言葉にしてしまえばとてもありきたりだし日常的に感じている当たり前のことなんだけど本当に、本当に本当に良かった。…とても良かった。

これはどこにでもあるありふれていてちっぽけな、とある家族のこじんまりしたお話。


【追記 3/12】
鑑賞2回目
色々とふんわりしていた部分が補完されて、ミルフィーユのように何層にも重ねられた裏テーマを噛み締めながら観ていると1回目よりも一層胸に込み上げるものがあって上映中ほぼずっと泣いてました。ハンカチがびちゃびちゃ…
人生ベストレベルに愛おしい作品になりました。
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