毛玉

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスの毛玉のレビュー・感想・評価

4.7
カオスの中で見つけた様々な“もう1人の自分”に触れることで、自分の人生と愛する人たちを受け入れることができる…!

随所で光るカンフーアクション!各俳優の素晴らしい演技!ライティングに編集…全て圧倒されました!
お下劣で突飛なアイデアで溢れかえったシーンの後に、マイノリティーの“拒絶”ではなく“愛”と“受容”を説くという涙なしではみられない展開がやってきました。映像のカオスさもさることながら、ストーリーの振り幅もカオスそのもの。

テーマ性やストーリーの面白さという、目に見えない中身ももちろん素晴らしかったですが、それを助けるビジュアルの部分が本作の特に素晴らしい点だと思います。
個人的にカンフーアクションが大好きなので、冒頭のキー・ホイ・クァンのウエストポーチアクションはブチ上がりました。また、相手の武器や周りの日常的なアイテムを使って圧倒していくカンフーアクションを、ミシェル・ヨーで見られるのか!と興奮がおさまりませんでした。

マルチバースの自分からスキルを借りてきて戦うという設定上、次のフレームで何が起きているかわからないという楽しさがありました。カンフーができるようになる!というシンプルなものから、指がソーセージになる!と言うものまで様々。そのカオスさが、またまた僕の大好きな『ボボボーボ・ボーボボ』のバカバカしさに似ていて、終始笑っていました。

めちゃくちゃにバカをやっていても、そのバカの中で確実にストーリーは進行し、最後にはそれが感動的に回収されていく。この上手さは監督の『スイス・アーミー・マン』でも感じたことでした。マイノリティーや社会で孤独を感じている人たちに寄り添い、最後には家族の愛の話に落ち着かせるなんて。15分前までケツに刺さったオブジェをぶら下げながらのカンフーというとんでもアクションをノリノリで見せてきた映画とは思えない振り幅でした!

何度も見たい、楽しいけどドラマもしっかり筋の通っている素晴らしい映画でした!
マルチバース演出がちょっと忙しいので、着いていくのに脳みそを使うところは、ちょっと人を選ぶところかもしれません。
あと、ステファニー・スーのビジュアル、毎回大優勝すぎ。
大好きでした!
毛玉

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