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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのPDLのレビュー・感想・評価

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人生の大半を占める労働を繰り返される灰色のジョブトゥパキ(Job to pack it=梱包作業?)にしないための緑のボタン。このボタンはすぐ側にある、というメッセージはソーシャルメディアがこの瞬間にも数多の人生を別の世界線に送り続けているこの時代には「ユーモアで平凡な毎日に祝福を!」という以上の強い説得力がある。

奇行の緑ボタンを押すと別のバースに飛ぶ!という話は、人生を振り返れば少なからぬ人が納得する世界の法則のようなものだろう。私たちは振る舞い通りの場所に辿り着く。
人生のアヤというのは、こうした個人の特性(ときには変態性とも云える)に応じた能力の開発が、その高まりに応じて、生まれや育ちからはゆかりもない何処かへ連れて出してくれることかもしれない。

能力開発とは「できない」ことを「できる」ようにする作業で、なんでも選べて、とにかくインスタントな現代では、こうした能力開発がとにかく難しい。

それでも、私たちの身体は反復練習によって、なにかを身につけている。あなたが昨日も当たり前のように車を運転し、すごい速さでレジ打ちを済ませ、その帰りに選び出した食材で家族に料理を振る舞い、寝床ではyoutubeから見事にも好みの動画を探り当てたように。

私たちの身体は反復練習によって、なんでも身につけられる。そうできている。そのための好奇心のランプは緑色に、「次はなにを身につけようか?」と今もあなたの耳の横で点滅しているのかもしれない。
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