ジョン

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのジョンのレビュー・感想・評価

4.6
幾つにも分岐されている人生、すなわちマルチバースの中で最低の人生を歩んでいる主人公が別世界の能力を駆使して悪と戦う。こんな話どうやって思いつくん!?という発想力にまずあっぱれをあげたい。これがアクションの面白さに繋がるし、視覚的な楽しさにも繋がるし、人生の虚しさとそれを上回る喜びにも繋がるという素晴らしい設定やと思った。

何より、泣けるんだなこれが。下ネタギャグは前作同様つまらなくて、指がソーセージみたいになっている世界線なんか「は?💢」ぐらいにして観ていたのだけれど、まさか泣かされるとは。
壮大な概念"マルチバース"を用いておきながら、ささやかな幸せを生きることの美しさ、愛の尊さという極めてベタでミニマムな物語の着地。しかし、それがマルチバースを用いることでしか描けない物語やったし、説得力がもの凄かった。
加えて、キャスティングの妙、設定の妙で人種やLGBTQについての読みもできるようになっており、深く重層的な作品に仕上がっていた。うん、これはアカデミー作品賞になり得る。

そして、本作がここまでの傑作となっているのはキャスティングの良さだろうと思う。
キー・ホイ・クァンに関しては、助演男優賞を獲らないとアカデミー賞にクレームを入れようと思うレベルで優しく愛に満ちた名演やった。

コメディとして笑えるかは甚だ疑問であるけれど、楽しいのは間違いないし、泣けるし、作品の作りもかなりの高水準やし、観終えた今とても幸せ。これは小沢健二を聴いた後の幸福感に似ている。ラブリーな映画でした!!!
ジョン

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