すごくヘンテコでとても壮大でかなり複雑で、でもとてもとても小さくてシンプルな物語。笑えてグッとくる傑作だった。
マルチバースという概念を、限りなく広がる可能性と位置づけるのはよくあるけど、そこからさらに、全てを実現するとそこにあるのは虚無というアプローチがまず良いよね。
そこからさすが『スイス・アーミー・マン』の監督という、馬鹿馬鹿しい表現の数々が笑えるし、その馬鹿馬鹿しさがそのまま今作のテーマ性と接続していくので気持ちがいい。
既定路線に収束していく感じは少し物足りなさもあったけど、総じて馬鹿馬鹿しさと優しさを貫いていたところは良かったと思う。