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すずめの戸締まりのuuukyeeのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.9
「行ってきます」がすずめなら、「おかえり」はモネが思い浮かんだ。

物語の鍵を握る大震災のあの日も、そんな風に確かに一人ひとりに日常があったはずなのに、あの日から始まった「行ってきます」があって、その「おかえり」を未だ言えず、待ってたりする人もいる。

だからこそ、観る人によって評価が別れる映画だと思った。評価以前の好き嫌いの問題でもなく、受け入れられないという人もいるかもしれない。実際に結構キツいシーンもあった。

個人的には満足度は高い。映像のスペクタクルと音楽は圧巻の一言。本当に素晴らしい。映画館で観ないと勿体ない作品。ストーリーのテンポも良いし分かりやすくて、声優さんもgood。

ただ、1番気になったのは話がキレイにまとまり過ぎていること。恋愛と震災と家族愛とファンタジーを盛り込んでおいて、こんなもんじゃないでしょ。と感じてしまった。

モネは毎日朝ドラで15分。震災で心にポッカリ穴の空いた若者の、やりきれなくて言葉にならない感情を「間」や「無」を効かせ、時間をかけて心理的描写を説いてくれた。そのおかげで感情移入しやすかった。

現実的に映画の2時間でそこまで描いて、かつ納得してもらうのは難しいか。と考えてみると、「こんなもんじゃない」じゃなくて、「ここまで」がきっと正解。「すずめ」のケースもあくまで一例として、「行ってきます」と「おかえり」をそれぞれが日常に当てはめてまた明日を迎えられれば、ストーリー云々はどうでも良い気がする。
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