なーけん

すずめの戸締まりのなーけんのネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

過去を戸締りし、新たな1歩へ

【⠀本作の戸締り⠀】
ニュアンス的にネガティブに捉えがちな言葉であるが今作では、3人の視点による過去の記憶や傷、喪失を胸に刻み戸締りをして新たな1歩へ進むメッセージが込められた作品である。

【⠀主人公•鈴芽⠀】
各箇所に発生する後ろ扉は廃墟した温泉街、学校、遊園地など賑わっていた街の記憶に目撃し悼み、最後は自分が生まれ育った故郷へと行き着きます。鈴芽自身に起きた母、場所、記憶が災害によって全てを奪われた記憶やトラウマと向き合い後ろ扉を締め、新しい自分や世界へ扉をあける。

【⠀新海誠監督⠀】
監督自身も、3.11の記憶が頭から離れず通奏低音として残り続け、そこから描き続けて来た小説やアニメーションが同じ作業になっていたと今作での小説の後書きで告白している。
当時から続いていた通奏低音、作り上げてきた作品や監督としてまたは一人の人間としての過去に後ろ扉を締め、新たな扉をきっと開けたであろう。

【⠀今を生きる自分⠀】
今日までは経験した喪失、トラウマなどを災害というフィルターを通して過去の自分と今の自分と真正面に向き合いおかえりと抱きしめ戸締りをし、扉を開けて行ってきますと伝え新たな世界へ歩き出す。
映画を鑑賞していた自分に対しての前向きなメッセージとしても受け取れた。

全体的に細かい所での描写、説明不足な点や三部作共通した男女間での恋愛関係へ発展する流れが前作よりも薄い点、説明的過ぎて観客の想像力を信頼してないなどと長編作品での起承転結するにはかなり窮屈だった印象。アニメ形式でネトフリやアマプラなど配信した方がより深みが増したんじゃないかな…
けど、個人的には三部作の中で今作はかなり肯定する立場ではあります。

これにて東宝コラボ三部作の完結作品として問題作かつ題材に真正面に向き合った作品でした。
次回の新海誠作品の新たな作品が楽しみです。

※作中では災害、震災を描く描写があります。ご鑑賞される際はご注意ください。
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