そうめん

すずめの戸締まりのそうめんのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.1
すっかり自然災害エンタメの第一人者になってしまった新海誠監督だが、前2作が隕石落下や首都水没という空想要素で薄めていたのに対し、今作は明示的に過去起きた天災をベースにしている。娯楽作品でこれらを題材として取り上げるのは勇気がいることで、並々ならぬ覚悟をしたと思われる。ついに国民的映像作家としての自覚を持ったようだ。
その描き方も誠実に思えた。災害孤児が様々な人々と交わりながら成長していく話がベースだが、寂しい悲しいはもちろん認めてあげつつ、その先を促そうとする。母代わりの叔母も一人の人間として葛藤を抱えるが、それでも娘のすずめのやりたいことを最後には見守る。昭和歌謡好きの彼は父代わりだろう。すずめは(死者ではなく)生きている者に囲まれて、思い出を大事に胸にしまいつつ、自分自身で成長する。悲惨な災害を乗り越えて“生きる”ということに希望を与えんとする力強い意図を感じる。
すずめの(無謀な)行動力は物語をグングン引っ張っていきシナリオに活気をもたらしている。その姿はジブリキャラを思い起こさせる。映像のクオリティも含め、わりと本気で宮崎駿を継承しようとしているのかもしれない。新海誠監督の次のステップが楽しみだ。