練達の域に達した、新海誠最高傑作。
引き込まれるような鮮やかな青空を始めとし、その後多くの"新海誠風"作品を生み出すに至った美麗で透明感のある風景描写に定評のある監督。本作でもその強みは活かしたまま、より好感の持てる、誰もが応援したくなるような快活な少女を主人公に据えて物語が紡がれる。
タイトルバックまでの流れが抜群に上手い。引き込まれるスピーディな展開と、魅力的なキャラクターおよびその性格、これから始まる旅の目的まで一気に描ききるすご腕プロローグである。
新海誠に強みのある民俗学的なアプローチは物語に深みを増し、過去作にはなかったロードムービーとしての見どころも備える。一流のクリエイターとして東日本大震災に言及しながら、ひとりの少女の成長を描くことからはブレない。
エンタメ性こそ過去作よりかは抑えめであったが、映像音楽演出どれをとっても、まさに映画館で鑑賞したい傑作であった。
