えるうっど

すずめの戸締まりのえるうっどのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.4
冒頭からテンポ良くストーリーが転がる。災害を未然に防ぎ、呪われたヒーローを元の姿に戻すため、女子高生が全国を飛び回る、という筋立てはわかりやすくキャッチーで、たやすく物語世界に入り込める。ポップな冒険活劇の楽しさがある。

ヒーローが全編を通してほぼ椅子の姿なのもユニークだと思った。


言いたいことはわかる。映画から伝わるメッセージに矛盾はない。
創作は自由であるべきだし、タブーなど押しつけるべきではない。
けれどもこれは、決して癒えることのない心の傷を抱えた人たちが大勢存命の間は、大規模商業エンタメのネタとして消費してはいけないテーマだろう、と感じずにいられなかった。
被災していない私でも、神戸という地名が出てきた途端ヒェッとなった。現実に失われた大勢の命を、まるでキレイな絵空事のように描くなんて。

違和感の方が強烈で、映画のストーリーに感動することはできなかった。
阪神淡路や東日本を知らない世代ばかりの世の中になったら、この映画も純粋な感動ファンタジーとして評価されるのだろう。
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