基本的にシチュエーションとかテーマは最高だけど、流れとかセリフがずれてる。画の力もあって感動するんだけど、突っ込みたくもなる。「君の名は」以降の新海作品に共通しているが、この節度をわきまえていない感じが、なんだかんだで好きだ。いいぞー
サイコメトリー(物の記憶を読み取る超能力)でもない限り、人は土地や物に宿る記憶、その暖かさやありがたみを鮮明には感じ取れない。主人公にその神通力を託し、人の業が招く災禍から世界を救わせることで、死と隣り合わせの日常のありがたさに気づかせる、そういう部分は純粋に良いと思った。
閉じ師と称して廃墟巡りしたり、旅先の出会いがあったりして楽しそう。見ていて楽しいしインスタントなエモさがある。
でも、主人公が恋心を自覚してから、物語が救出劇の方向に盛り上がっていくところで若干冷めた。新海作品に特有の男女の間合いの歯痒さに耐えきれなかった。こっちの世界とあっちの世界、生と死をテーマにしているのだから、恋愛に関する表現ももっと抽象度の高いものを期待してしまう。「君にまた会いたい!だから生きるんだあー!」これじゃあただ業に振り回されているだけじゃないの。
最後に幼少期の自分と対話するシーンも、セリフは一個も刺さらなかった。全部ずれてた。でも、震災を経た日本社会を生きる人々に明日への希望を抱かせんとするシチュエーションとかテーマに感動して泣けてしまう。なんやこれ。