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夏へのトンネル、さよならの出口のKSのレビュー・感想・評価

5.0
隣の芝は青く見えるという諺があるが、本作は、傘をメタファーに恋愛を用いて人間関係における他者から見える視線と本人から見える視線の違いを描いた作品。

何かを失った人は特別に見えるかもしれない。でも、それを覗き込んだ時の絶望感や、女の子が彼の内面の特別なモノを抉り取るような演出など、青春恋愛モノという表面上の見える分、余計にそのコントラストが鮮明になっていく様は、痛々しかった。それを畳み掛けるように彼女のメールが届き、彼女は望んでいた特別なモノを手に入れているとも捉えられる。しかし、彼女の望んでいた特別なモノというのは、自分の経験の事であるし、彼の望んでいたモノは自分が自分でいられる場所というラストまで、若者を主人公にしている事で、始まりの教室で話されていた雑談にある人生の意味というテーマ性が浮き上がってくる所まで、軽く観るつもりだったのに、貸し借りという言葉が象徴的にテーマを補完していて、セリフも含めて最初から最後まで細かい描写が面白い作品だった。
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