ゆかこ

生きる LIVINGのゆかこのネタバレレビュー・内容・結末

生きる LIVING(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

黒澤監督の『生きる』が大傑作で印象深いため、観るのが少し怖かったがオリジナル版へのリスペクトも感じられつつ、イギリス版としてきれいにリメイクされていて良かった。1950年代のロンドンの街並みにおしゃれフォントのクレジットを重ねるオープニングから雰囲気に引き込まれた。
ストーリーもほぼオリジナル版のまま。そのためか、ウィリアムズが残りの人生を「生きる」決心をするまでが少々長ったらしく感じてしまった(あの名シーンがない分、説明的なセリフを多くした印象)。
オリジナル版は当時のお役所仕事への痛烈な批判が込められていたが、本作は(時代も異なるので)働くことそのものへのメッセージに感じられた。
主人公の死後に部下たちが語るシーンは、オリジナルの日本的な葬儀場のシチュエーションをどうするのかと思ったら、汽車内での会話になっていた。ここで冒頭の通勤シーンに納得がいった。「課長のように生きよう」と誓ったはずが、元の日常に戻ってしまう部下たち。オリジナルではここにシニカルさを乗せて重い余韻を残して終わっていくが、本作はここで新人として我々観客に近い目線でウィリアムズを見てきたウェイクリングの存在が重要となる。彼はウィリアムズからの手紙の通り遊び場を訪れ、警官から雪の日のエピソードを聞かされる。そして、明日からの行動を変えるのではと我々に感じさせるような前向きなラストとなった。ビル・ナイが民謡を歌う声もずっと心に残る。
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