2023/3/31 鑑賞。
とても見事なアダプテーション。感銘を受けた。内容も構成はほぼ同じ。時代もほぼ同じ。それでもとても端正に"英国"化されている。
もともとの作品が濃厚に日本らしさと時代を反映しているだけに、そしてその時代は今に結局つながっている故に、いま見ると身につまされ過ぎてつらいのよね。真面目にやってきても報われない、とか、モテない人には何の希望もない、とか、結局はいつもと変わらない日常に落ちてしまう、とかいった、とても日本的な諦念。志村喬があまりに適役なので、そして本質的な状況の変わってなさに呆然としてしまう。。（主人公はおそらく兵役を逃れているので、そうやって命を惜しんでもこういうことになる、という皮肉もあるんだとか、何かで読んだ）
こちらの作品では、英国紳士らしい抑制と、”何か”は引き継がれて歴史は変わるのだ、という希望がある。これは日本と英国の差なのか。
とは言え、いまの感覚では、こちらの方が原作よりもわかりやすいのではないか。僕は正直こちらの方が好きかな。この映画のテーマとなっているようなことは、どのみちいつかは感じることなんですよね。人生のどんな時期にいるにせよ、ちょっと心の片隅にでも置いておいた方がいいと思います。原作ほど衝撃的ではなく、心にそっと種を植えておいてくれるような映画でした。見てみるといいですよ。
