なを

生きる LIVINGのなをのネタバレレビュー・内容・結末

生きる LIVING(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ゴールの持つ役割は張り合いだと思う。宿題にしろ仕事にしろ人生にしろ、締切が近づくにつれ、やれやれと思い腰を上げ集中して取り組む。たまに惜しく思う。焦りとか危機感がないと人間は怠惰になってしまいがちだ。
主人公のウィリアムは人生の終わりを嫌でも感じたからこそ仕事を始めとした自分の人生に集中して生き始めたのだろうと思う。市民課で、数あるうちの一つにあれだけの情熱を注げるのは尋常ではない。彼は作中でも言われたように、手本のように働いたが、あの働きをこれから何十年と未来のある人間が同じようになるには限界がある。足を運び、頭を下げ、体力的にも精神的にも摩耗していく。周りは仕事を押し付け合い後回しにし楽にのらりくらりこなしていく。一生懸命やることは時にはダサく見える。それでも、だからこそ、彼の小さな功績は残された者の支えとなるだろう。ロールモデルがいることは強い。ダサくても、疎まれても、後世に残らなくても、物事を成し遂げた達成感、一体感は彼らの宝物となっただろう。
病気のことを家族に打ち明けなかったのが個人的には残念だけれど、近しい人間に打ち明けることの決心はなかなか難しいだろうし、ウィリアムが紳士に憧れていたことを考えると頷けるかな
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