AYN

常田大希 混沌東京 -TOKYO CHAOTIC-のAYNのレビュー・感想・評価

4.5
芸術家はいつも孤独だ。
シューベルトもゴッホも、生前は作品を理解されることなく、静かに絶望し、この世を去って行った。
さて常田大希である。
彼が若干二十歳の頃、デモを持ち込んだレーベルに、「かっこいいんだけど、金にはならないよ。」と言われていたのは有名な話。
どうしても腑に落ちなかったという。
「音楽の歴史と向き合って、
楽器と向き合って、
なんでこんなに世の中に必要とされてないんだ。」
声を荒げこそしないが、彼の全身は悔しさや怒りで燃えていた。
「音楽には嘘をつけない。
だからこそ勝ち取らなきゃいけないものがある。
評価されなきゃいけないものがある。」
妥協を許さないからこそ、
世の中に認められる作品にこだわった。

そして、誰も予測していなかったスピードでそれを現実にしてみせた。

…これが常田大希なのだ。

わたしは何の専門性も持ち合わせていないが、ドキュメンタリーを見る限り、
彼の持つ、人類への愛情が、楽曲に強いエネルギーを持たせ、周りを巻き込んでいく、そんな様を感じ取ることができた。

音楽の本質は、人類への愛なのだろう。
何千年と紡がれて来た文化、言語、民族性、どれをみても、そこにはいつも音楽があった。楽器があった。人の声があった。

彼はカオスというテーマを好んで使うが、
つまりは、この世界に存在する、有象無象の人間たちが好きなのだ。

そしてそんな得体の知れない者たちが、いつの間にか群れを成して、同じ時を全身全霊で生きている。
そんな光景をいつも夢見ているのだとしたら、
King Gnuもmillennium paradeも
その独特なネーミングに合点がいくものだ。
ヌーの群れは、そしてパレードは、終わりを知らない。
彼がこの世を去る時が来ても、有象無象の者たちの行進は、どこまでも続いていくに違いない。
AYN

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