スクラ

魂のまなざしのスクラのレビュー・感想・評価

魂のまなざし(2020年製作の映画)
3.0
<ヘレン・シャルフベックって知ってましたか?>

おそらくほとんどの人が耳にしたことがないであろうフィンランドの画家である。
日本では2015~16年に回顧展が行われ、私は当時宮城県立美術館で彼女の作品を実際に観た。
作品そのものは観たことがあったが、彼女の人生には詳しくなかったので、
今作は「あの絵を描いた画家の人生はどんなだったんだろう?」と考えながら鑑賞できた。

全体を観た感想としては、何か伝えたいことがあるってよりは、
ヘレン・シャルフベックの半生を淡々と描いた伝記映画って感じがして、あまり制作側の気持ちは伝わってこなかったかな。
家族との会話からは男性優位の社会が垣間見えたり、女性なのに「こんな作風」と揶揄されたりと
女性ゆえの苦悩が描かれていて、そこに抵抗していくヘレンの姿が描かれるも、
物語の根幹は10歳以上年下の男性との恋・失恋で、ヘレンが一方的に振られる様は、男性に翻弄される女性そのもの。
社会には抵抗したいけど、恋となれば話は別ってことなのかな。

個人的にあまりはまらなかった映画。でもなんとなくその理由は分かる。
私が彼女の作品で一番好きなのは『雪の中の傷ついた戦士』(1880)で、今作が描いているヘレン・シャルフベックの
人生よりも前に描かれた作品なんだよね。今作は年下男性との出会いで変化したヘレンのまなざし・作風に焦点を当ててるものだから、
変わる前のヘレンの作品が好きな私にとってはイマイチだったのも納得がいく。

この画家が好き!って言っても、画家の作風って人生の中で転々と変わっているから、
どの時期の作品が好きで、その時期ってその画家にとってどんな時期だったのかを映画を通じて知ることで、
より深く一人の画家について詳しくなっていけるのはいいなと感じた。
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