柿ピー

ありがとうの柿ピーのネタバレレビュー・内容・結末

ありがとう(2022年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

内心ほとんど期待してなかったんです。すばらしい役者さんがメガホンを取った作品は、残念ながらイマイチという過去の経験から、はてまた偏見から。

冒頭役所広司が蕎麦屋を出てエスカレーターを降りてくる。その、降りてくる前の、「誰も乗せていないエスカレーター」を見てて涙がでてきた。何故かわからない。画像の色合い、黒めに出てるせいもある。ただ動くエスカレーターそのものに力がある。主人公が病んでいて社会の外側にいることに、どこかで共鳴してるのもあるかな。

画像の色合いは全体的に上記のようなトーンで、都会も森も、久しぶりに遭遇した色合いからくる「感じ」を美しいと思った。監督さんは確か写真が趣味だと聞いたような。

ラストの中途半端さ。えっどうなるの?テーマは?ってなる。

今の私なりの勝手な解釈は……。死にたいと思って、実際繰り返し自殺を試みるも、なかなか上手く死ねない主人公。突然現れた若者(瑛太)はズドンと主人公の足元(膝?)を撃って笑う。若者はこう言ってるような気がした。「死にたいんだろ?止めないよ。でも殺してもあげないよ。足元撃ったよ。どう?」主人公は突然来た身体の部分的な死を、痛みを持って味わう。部分死(怪我)を生きている今、生と死のはざまで、森の木々や太陽はうつくしい。まあ躍起になって死ななくてもいいのかな。この若者に頼めばいつでも死なせてくれそうだし、なにより自分を認めてくれた。彼の存在に気が逸れた。

「逸れた」ってちょっといいことなんだと思う。
柿ピー

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