ナオ

エンパイア・オブ・ライトのナオのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
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とてもとてもとても良かった。

たしかに映画と映画館への賛歌だけども、それだけではないというかそれ以上に、男尊女卑社会や人種差別への虚しさが中心にあると感じた。怒りよりも虚しさ。予告やポスターから感じられる、ほっこりしたノスタルジーみたいなものはほとんど感じなかった。だけど80年代のたくさんのポップカルチャーが出てきてそれは楽しい要素だし(全部メモしたかった)、同時にその掠れた色味の映像に当時の政権下の危うい空気感も収められていて見事。

この場所に「残る人と出て行く人」という対比がいくつか出てきて、それが同じ人物内での変化だったり、虐げる側と虐げられる側だったり、本来残るべき人が出て行かざるを得なかったり...。ひとつの映画館という場所で起こる人間の流れがまさに現代社会だった。

若さと美しさが前面にある女優ではなくてオリビア・コールマンがこの役をやってくれたことが本当に本当に嬉しい。本当は嫌なのに、笑顔で快諾するような顔が頭から離れないし一緒に泣いた。
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