映画の開始冒頭30秒で私はビビっときた。
この音と映像の始まりは私の好きなそれだ。
映画館で見て良かったと思える作品になるだろうと。
そして、あっという間に2時間が終わった。
こころの奥底にある琴線に触れて、
そしてそれを静かに
紡いでいくような一本だった。
色々な問題を複数に詰め込んで展開するし、必ずしも最後に回収するようなものでもないので、人によって評価の良し悪しは分かれるだろうが、近年のサム・メンデス監督の作品の中では抜きん出て素晴らしいと思った。
なんというか、生きた映画だった。
少なくとも私にとっては。
そしてそれが刺さりまくった。
彼女の半生に共感しながら、
彼女の生きていく様に勇気づけられた。
あの映画を賛美するシーン
で私は嗚咽しかけた。
なんだかよく分からないが、
ひどく心がもっていかれた。
私だけでなく、
映画館からも啜り泣く声が聞こえたのは気のせいだろうか。
幕引きもよい。
人生を幾ばくか経験してきて、
とても身に染みる終わり方だった。
送り出す方も、送り出される方も。
人はどうして映画を見るのだろうか。
映画館に足を運ぶのか。
このような映画と出会うためだから、
である。
映画表現がもたらすことができる感動的なマジック、あのシーンにはそれが溢れていた。
紛れもなく光輝いていた。