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エンパイア・オブ・ライトのSoulFoodKitchenのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
4.0
1980年初頭のイギリスの港町マーゲイト。
パンク、ニューウェーブが若者に支持され、スペシャルズ、セレクター等の2トーンレーベルは白人、黒人の垣根を超えた音楽として日本でも人気でした。
黒人青年のスティーヴンの手にする「The Beat」の2ndアルバムも懐かしいね。
でも、80年代のイギリスはサッチャー政権下で貧困や格差も広がり、移民排斥等の排外主義が広がって、各地で暴動も起こってました。
パンフレットにピーター・バラカンさんも書いてた「白い暴動」「カセット・テープ・ダイアリー」レゲエの方の「バビロン」では、この辺の状況が描かれてます。
スティーヴンも白人のスキンヘッズの右翼集団に襲われます。
襲われたスティーヴンがベッドの上で「俺の親父も同じ目に遭った。俺の子供も同じ目に遭うのか」と問いかけます。
一方のヒラリーは、ボブ・ディランとかキャット・スティーブンスを聴いてて60年代に青春を過ごしたスティーヴンとは一世代以上上です。
統合失調症という自らの病気と向き合って、挫折を乗り越えて前に進んでいこうとします。
上の世帯の異性への憧れは通過儀礼として誰にでもあります。
そんなヒラリーとの別れを経て、大学で建築を学ぶ為に未来に向かうスティーヴン。
「エンパイヤ劇場」はスティーヴンにとってもヒラリーにとっても「暗闇に差す仄かな光」であり「人生の通過点」になるのでしょう。
ただ、スティーヴンがヒラリーと恋愛関係になったのが入り込めなかったな。
僕にはヒラリーが重すぎたワ・・・

とにかく映像が特筆する程に美しくて見惚れてしまいます。
レトロなエンパイヤ劇場の佇まいが美しいです。
円形に弧を描いた椅子席、スクリーン脇の彫像、赤いカーペットに大きな正面階段。
なんて贅沢な空間でしょうか。
暮れなずむ空も穏やかな海も、ラストの公園の緑のアーチと言い、そして差し込む光の、美しさ。そんな構図と色彩を見るだけでも価値がある映画でした🥳
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