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エンパイア・オブ・ライトのEITOのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
4.4
サム・メンデスの「侘び寂び」を垣間見る。

先に感じた違和感を言っておくと、結果的にラブロマンスがメインの締めくくりになったわけだが、「黒人の青年と白人のおばさまが結ばれるには、それなりの理由が必要ではないか?」という疑問に、深く考えたうえで導かれるべきだと思う。
世の中の「普通」は、常に粗悪な偏見ではない。スケール大小あれど、多くの人が同じ行動をしているということは、それ相当の正当な理由があるに違いない。だったら、その「普通」を逸脱した、(人種的な違いならまだしも)年の差という1つの違和感がちゃんと解けるような「彼ら」の正当な理由が描かれるべき。しかし、この作品にはそれがない。
「人種も、性別も、年齢も関係なくね?好きなように生きようよ」的なSDGsノリは、たったそれ1つで存在しているわけではない。粗悪な偏見と拮抗するべくして生まれたものだと思う。ついでにSDGsノリ全然好きじゃない、もうもはやビジネスワードだろ。

ただ、個人的ハイライトはラブロマンスではない。映写室の彼は小さな部屋に好きなものをギュッと閉じ込めてミニマムな幸福を感じ続けている。おばさまと青年は、肉体関係を持ってはいるものの、自身の苦悩を認識し、戦い、苦しんで、鬱になる。そして時にお互い傷を舐め合いながら、映画と音楽で生きている。「あ、俺のやってる上位互換じゃん」と思った。作品としての評価がどうでもよくなって、ディーキンスの映像にただ浸りながら、心地よいドリップ感に落ちる。(同じ理由で是枝監督が好きなのだが、日本人は案外嫌いな人多い。自分は根性ないくせに他人には厳しいんだよね、しょうもない)
というかそろそろ彼にもっかい賞あげてやってよ、功労賞でもいいからさ。じゃないと、いじけて映画作らなくなっちゃうよ。
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