いつもいっちゃん

ティルのいつもいっちゃんのレビュー・感想・評価

ティル(2022年製作の映画)
4.7
力強い傑作。
これがアカデミー賞にノミネートされなかったことが疑問でしかない。

エメット・ティル・反リンチ法が成立したきっかけになった公民権運動。
14歳の黒人少年エメット・ティルが白人のヘイトによって殺害された。
残忍な遺体を前に悲しみと絶望に打ちひしがれる母、メイミー。
しかし母はこの凄惨で理不尽な出来事に立ち向かう。
息子の見る影もない姿になった遺体を死化粧もせず、メディアや葬儀に堂々と見せる。
殺人者の行ったことに対して目を背けさせないこと。
そして自らも目を背けないこと。
耐え、憤り、奮起する。
その姿が観る側にも同化していく。
白人達の心ない罵声やニガーという言葉を裁判所という場であっても執拗に浴びせてくる様も衝撃的。
そして法の場であれ平気で嘘をつく。
結果が分かっていても、また新たに声を上げていく強さ。
そしてその根底にあるものにまた母の強さと深さが見える余韻深いラストシーン。
ダニエル・デッドワイラーの熱演に持っていかれる。
彼女の表情、声に至って繊細かつ凛々しさがある。
製作も務めたウーピー・ゴールドバーグがメイミーの母親役で出演していたが、もはや別人のよう!
伝えるべきことを目を背けさせずに描く。
綺麗事に終わらない。闘いは続いていく。
その重みがちゃんと強く残る映画でした。

主題歌の「STAND UP」も素晴らしい。