いつもいっちゃん

ありふれた教室のいつもいっちゃんのレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
5.0
本年度アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート作品。
物凄いパンチ力。

財布を巡る疑惑が生む崩壊。
学級崩壊から束の間、校内崩壊へと予想もつかない事態に発展していく。
財布からの金銭を抜き取られたと主張する女性教員。
普通であれば被害者としてしかるべき味方を得られる立場。
しかし、それが揺らぎ糾弾される立場になっていく恐ろしい視点。
昨今、学校でのコンプライアンスの問題が取り沙汰される現代社会。
中にはどちらかが確実に悪く見えても、そうは受け取らない周囲の反応がリアル。
善悪よりも、その人の取る行動1つに狙いが定まるとそこに懐疑的になる集団心理。
そして教師側の軽率な判断と行動。
校長のプロ意識から出る対応ですら頼みの綱にならない。
結果放置状態にならざる得ない負のスパイラルが、ありふれた教室の闇を炙り出す。
ラストに残す余韻も、事件の真相にフォーカスしない大人と子供の間の感情が鑑賞後も押し寄せてくる。
疑惑と混乱、対話を描いた現代をリアルに切り取った傑作。