このレビューはネタバレを含みます
いろんなことを思った。
女性指揮者という、圧倒的な力を持つ存在が主人公だが、実際には権力を持つ男性が投影されている。そして、男性化しているように思う。男性社会で生き残るために、男らしくマッチョに生きる姿、それ故に男よりも男らしい部分があったのだろうか…。転んで顔に怪我をしたにも関わらず、男に襲われた。と嘘を付き、相手の男の方が怪我したに違いないなどと笑い飛ばす姿は男らしさを振るっているようで、個人的には象徴的なシーンだった。
ターは権力を濫用していたのかもしれない、ただ、そこには権力があるから寄ってきている人間がいる。そこにフォーカスはしていないが故に、権力の虚しさを思った。
キャンセルカルチャー、作品の芸術性と作者の人間性の問題は、階層構造が明確な場では多く生まれる。映画が趣味な自分としては、映画界の階層構造もそうだと思う。芸術至上主義が改められたというのは、不祥事が拡散され世論のような、"正しさ"が拡大していったからではないか？（ただし、没落を好む人間が一定数以上いて、叩く時の心がない人がいるのも事実ではないか？）結局昔はそんなことはなかったのだと考えると、正しさとは？と考えてしまう。答えは出ない問題だ。
