IKUZAGIE

TAR/ターのIKUZAGIEのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.8
「とても面白い」というより、「とても興味深い」という方が合っている。あえて前情報無しで鑑賞しましたが、大まかなあらすじ程度は知っていた方が良かったのかなあと思いました。話がとても難しい訳ではないですが、深く理解するには2回以上観ないとダメな映画だろう。という事で以下は1回目の感想。
まずはストーリー以外で印象に残った点。良い点は、“ケイト・ブランシェット”と“撮影”。悪い点は“上映時間が長い”というところ。
ケイト・ブランシェットの演技に関しては「凄い」の一言。クラシック音楽業界については知識ゼロですが、もはやそういう人にしか見えない。でも、映画の演出なんでしょうけど、ある時は性別が分からなく見えたし、キレた時は突然老けたおっさんに見えたし、メイクも相当力入れてるのだろうと思いました。
撮影に関しては、「自然光だけで撮ってるの?」ってくらい画面が見たまんまというか、そのまんまというか、日常に近く感じました。そういうリアルな空気感が、突然ホラーっぽい演出になると、お化けは出ないと分かっていても、すごく怖く感じました。特にメトロノームのところはなんかドキドキして、ビクッ!ってなりました(笑)。
ストーリーに関しては、ネタバレになるので控えますが、コントロールする側される側という所から、権威だったり、キャンセルカルチャーだったり、色々と考えさせられる内容でした。なんかいわゆる固定観念批判も次のステップの固定観念というか…例えば若い天才の「こっちの方がなんか良くない?」みたいな軽い助言や新しいアイデアって、かつての物をブラッシュアップするというより単純に上書きされてるだけなのかなあと思ったり…。割とお年を召された方が欲しがる“権威”については、たぶん権威とはただの社会構造で、それ自体に力がある訳では無いが、何となく勝手に偶像化されている気はしました。例えば誰かに「好きな音楽は?」と訊ねて、「クラシック音楽を少々」なのか、「アニソンやゲーム音楽大好きです」なのかでだいぶイメージが違う。勝手なイメージですが、クラシック音楽の方が重厚かつ上品で、何より賢そうと思ってしまう。こういう思考も、意識はしていないがなんか権威主義じゃないのかと思ったり…。キャンセルカルチャーについても、それ自体が悪い訳ではなく、やり方次第ではより良い社会を築くためのツールになりうるのかもしれないが、現状は何となくただの誹謗中傷が多いように感じるし、純粋な正義感なのか怨恨なのかの判断って誰ができるんだろうとか思って…うーん…あれ?いっぱい考えたら眠くなってきた…という事で、あれこれ考えても人それぞれ違う意見を持てる映画だと思うし、単純に「ケイト・ブランシェットすげぇやん!」ってだけでも観る価値はある映画なのでは。ちなみに映画のオチに関しては、個人的には大変ポジティブなものとして捉えました。
さて、とりあえずもう一回観るべきかと思うのですが…しかし…どうにも長い…。解説動画プリーズっ!
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