Junpei

TAR/ターのJunpeiのネタバレレビュー・内容・結末

TAR/ター(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

とても革新的な映画に思えた。まず「コロナ禍」の存在する世界線の作品だという事。手の消毒など、その影響は随所にあり、特にター本人の強迫性障害的な描写に拍車をかけていた。カメラワークもロングショットやワンカットを多用していて面白かった。そして何より、観る者を置き去りにするかの如く、専門的なワードを、解説なく散りばめている点である。この様な、何の説明もない描写は多いが、本作ではそれが実は効果的になっている。ターはクラシックの権威からラストの所まで転落するが、例えば作中のクラシックの知識が分かる人は逆にラストの描写、あれがゲームのファンイベントの演奏指揮だとは分からないだろう。反対にラストの意味が分かる人は、作中のクラシック知識は難しい。でもそれで良くて、クラシックに詳しい人が、ラスト自分のよく分からない演奏会に参加してるというのが、主人公がどれだけ落ちぶれているかが物語る(反対に自分のよく分からないぐらい高尚な仕事をしていた人がモンハンの演奏会の指揮をやってるという見方も出来る)。観る者の知識差が作品のスパイスとなるのが興味深い。映画自体の上映時間が長い分、随所で巧妙に細かく描いてたのが面白い(主人公とパートナーがリラックスのためにジャズ聴いてるシーンも、クラシックなら仕事になっちゃうからとか)。
Junpei

Junpei