ケイトブランシェット凄すぎ問題勃発。。
途中から雰囲気が変わり思いもよらないエネルギーに引っ張られていき、サスペンスの様な撮り方、物語が揺らいでいく様はエキサイティングで面白かったです!
噂通り、ケイトブランシェット、何故これでアカデミー賞獲らないのか!という素晴らしい演技でしたね。
そらまぁ、彼女はいつも凄いけど、彼女の代表作になっても良い程の完成度。
本当に"タイミング"でしかない、、、アカデミー賞とらなくてもケイトブランシェットの価値はかわらないのですが、それによってこの映画を見る人が減ってしまうのはもったいないです。
最初の長尺のインタビューシーンから、完全に憑依してる!そう、一気にTARがみえてくる。自信溢れる話し方、表情、そして、余裕からくるユーモアのセンス、なんなら鼻につく程にw 更には権威側にいる人間の傲慢さとイヤらしさ...ケイトブランシェットが元々持つあまりに完璧な男女を超えた骨格の美しさが、その自信と傲慢さを更に誇張してみせてるようにも思いました。
メイクを女性的にしてないせいもあるが、まるで、初老の男性のようにも見える。。
(もともと制作側は男性指揮者をモデルにこの映画を撮るつもりだったとのこと、、、それが、ケイトブランシェットと映画を撮りたかった監督はこれは女性指揮者であることに変更して、脚本を仕上げたそうです)
女性でも男性でも必ず権力は腐敗する、、、と、監督の言う通り、長年同じ場所に居続けるとそこは、権力が澱み、濁るものなのです。。。ただそれが女性であることでファンタジーになってはいるんですけどね、、、とはいってました。
今も映画業界はキャンセルカルチャーが横行していますし、実際この映画は"権力"がテーマであり鍵ではあるが、権力の腐敗や、キャンセルカルチャーに対して何か問題提起や提言したかったわけではないと、、、TARという1人の人間を描きたかったのではないかと私はおもいます。
厳格なクラシックの世界から追い出されて、彼女が、アジアに渡った先で、古いオーケストラの映像をみて、嬉しそうにしている表情や、楽譜と丁寧に真剣に向き合っているシーン、若い楽団員達と真剣に渡り合っている、、、それにより、彼女は全くブレずに音楽を愛し、向き合っていることが伺えます。(バッハ問題がでてくる学生とのやり取りでもそれは然り、音楽に対して純粋で強い信念と情熱があるのです)
神経質だった彼女は少しずつアジアの喧騒に慣れやがて空気に癒されて、また、新たな舞台で新たな世界に羽ばたいてるのです。
アジア=低レベルで未熟な文化、
ではなく、今まさに花開いている活気ある新しい芸術やカルチャーだと監督は言っています※監督の叔母が日本人なのもあり、何度も日本にも来てるそうですし、ゲームカルチャーが大好きとのこと。
ヨーロッパや、白人至上主義なハイカルチャー以外は転落だ、と思ってしまうのはあまりに短絡的であり、古き良き伝統芸術も続いていくと同時に、実はその先に地続きで今新しく湧き上がるエネルギーや芸術があり、、同時並行的にその中で私たちは生きているのだ!!と思います。
TARの犯した間違いは許されるものではないけれど、もう一度、次の世界で新しい一歩を踏み出す原動力は、好きなものへの変わることなき情熱であり、TARにとって音楽が救いであり、そこに対して誠実な姿に心打たれます。
力強い映画です。
素晴らしかったです!!!!