このレビューはネタバレを含みます
この映画が美しいということが残酷だと思った。
ワニのメタファーのきつさ
途中ハネケのピアニストをめちゃくちゃ思い出していた
ずっと重苦しくじわじわと怖い。不鮮明な夢の描写とメールの画面が映される以外に、ターとクリスタの間に起きた出来事の真実は描かれない、けれど加害者であるターの振る舞いに痛いほどの既視感を持ててしまう。その既視感のある/なしの致命的な落差が映画を観た人の間に起こり得ることも今の日本では残念ながら予想できて、そのことが映画とは関係なくしんどい。
クリスタが画面に現れるのは傷ついて損なわれ、去ってしまった残像としてのみで、それが痛々しさをいや増す。ターが大切に思う家族を失う瞬間は映画に出てくるのに、クリスタの両親は告発した者として言及されるだけだ。クリスタを自分の権力でもって潰した時、彼女を大切に思う人間がいることを想像もしなかったのだろうな。
終盤いきなりベトナムへ行って仰天したけれど、欧米で干された有名人にはアジアしか行き場が残されていないというのはしかし現実に沿っている(すごく嫌な感じに)。そしてそれはヨーロッパの文化の権威と、アジアとの距離や権力勾配をも痛切に示唆していて、ぎくりとさせられる。
この役を男性ではなくレズビアンに負わせている事自体に批判があるけれど、ケイト・ブランシェットの演技が何もかもを超越してしまっている、ように自分には見えた
エンディングに愕然とする、なんなんだそれは‥!