あまのうずめ

TAR/ターのあまのうずめのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.9
リディア・ターは音楽学で博士号を取得する他ペルーの先住民族音楽も研究。単独のオケでの録音がまだで、ベルリンフィルで録音を試み、最後の5番がライブ録音と決まっていた。近日自叙伝も発売されるとインタビューで語る。パートナーのシャロンはベルリンフィルのコンマスでもある。ジュリアード音楽院で講義を行いベルリンへ飛ぶ。


▶︎アカデミー賞で作品賞とケイトが主演女優賞にノミネートされる他各映画賞で主演女優賞を獲得。監督はトッド・フィールドが久しぶりにメガホンを取った。ケイトが指揮の訓練を受けたそうだが、見事にタクトを振っている他、指揮者の孤独と欲を見事に演じていた。

クラシックやオケの話も本格的でより楽しめ、ケージの『4分33秒』が話中に出て来たり、グールドそっそりなピアノを弾いて見せたりとコアなファンにはたまらないシーンもあった。バッハやマーラーの考察は為になったし、バーンスタインのビデオも興味深かった。

カメラアングルや構図も絶妙で編集も臨場感があり良かった。

作品自体は栄光と転落とそれらに伴う狂気も描いていて、TAR=ARTといった随所の細かい遊びにも痺れる。既にもう一度観たい欲求が湧いて来ていて、その時はまた違う解釈が出来るかもという期待がある。ドイツ語の字幕も欲しかった。