芽ェ

TAR/ターの芽ェのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.8
全体の雰囲気は好きだし、ケイト様は素晴らしいのだけど、期待していたような大波が押し寄せずに終わってしまった。確かにターは大事なものを失っていくのだけれど、なんだか私は悲劇のパワーをあまり強く感じられなかった。ブラックスワンみたいにその狂気を感じたかったんだけれど、なんだろうなにかが弱く、ゆるやかで、物足りない、というのが、映画全体への感想。

主人公のターについて考えると、彼女はちょっと他人に無関心だったのかな。他人の心に。大事な人だとか、魅力的な人だ、才能がある、みたいな興味、感情を他人に持つことはあっても、その大事な人を悲しませないためにはとか、大事にするってどういうことか、みたいなことはおろそかな人って気がする。なにかの世界でトップになる人は、感情論みたいなものにシビアでそれゆえその地位を確立できるのだろうけれど、それで踏み外したターを見ていると、せめてパートナーくらい、大事にできなかったかなと思う。現れた魅力的な娘がそっけなくターをあしらうのをみてるといたたまれなかったけれど、ターに応えるタイプばかりだったんだろな(それは本当にターへの憧れからだったり、単に野心家タイプもいたのだろうけれど)と感じられて、そのなかの一人が「例の」メールのかたなのかなと。だから結局彼女は、人を大事にできないから転落したんだろうなって。才能に溢れているのに、かなしいね。
芽ェ

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