このレビューはネタバレを含みます
勝手な先入観で「男性社会に対して、強く勇ましく果敢に立ち向かって女性の地位を築いた素晴らしい女性の奮闘ドラマ!」
若しくは
「一人の女性指揮者が、財団や楽団員、株主やら何やら大きい団体から権力で潰されそうになりながらもひたむきに音楽に向き合う」
みたいなお話かと思っていた自分に
笑いが込み上げてきました🤣笑
全然チガイマスヤン笑
でもこれはこれで良かった!
ケイト・ブランシェットの演技力はもう言わずもがなですね。
錯乱した表情や音楽への執拗な拘りを持っている時の目、若者に狭い視野は良くないと諭す表情
そしてお馬鹿さんな感じに若くて才能のある女の子に絆されている表情も
全神経抜けててGood笑
彼女にとってのユートピアだったんだろうなぁ…
「芸術の才能とプライベートは別に考えないと」というのが伏線になってるのも気持ちいい…
さて、「性別なんぞ関係なく“利害の一致”で近づいてくる人は存在する。」
そんな普遍的なテーマを用いているのだけれども、その描き方がなかなか捻りを効かせていて、至る所に物語がぐっと面白くなる仕掛けがあって刺激的で刺さりました。
ターも初めからこんなに忖度しまくり女好き指揮者だったのでしょうか?(んー私はこの人、根っからの遊び人に1票って所だけど笑。割り切ってて罪悪感のざの字も感じないしね)
でも、人の何百倍も努力しないと今の地位は築けなかったことが紛れもない事実。
そう考えると彼女の中で「ロマンス」や「女性」というのは一種の薬であり、唯一の生きる糧だったと思うと、、ね
そしてまた登場人物をレズビアンにしたのも大正解すぎる。
これが対男性だったらこの映画の見応えや味わいは大きく変わっていたでしょうね
人々の先入観を劈くのにとても良いアクセントになっています。
私自身もキラキラストーリーと思っていたし、、あぁ恥ずかしい
楽器を扱う人たちは上品だとか調和を重んずる人だとかそんなイメージがある人もいそうだけど、内実人を蹴落としてでも掴みたい!あの座を勝ち取りたい!みたいな競争心で渦巻いている人達も多くいる訳で
看護師=優しいとか
人を恋愛感情から依怙贔屓して利用するのは男の人だけだとか
権力のある人は精神力だけでやってのけていて薬や幻覚とは無縁だとか
贔屓されている生徒達が必ずしもその権力者に対して陶酔しているとは限らないシーンでもよく伝わります
(チャットで悪口言ってたりね)
なんか妙に支配者に依存し出す子いるよね
完全に上前跳ねて利用しようとする子もいるしここら辺現実的で面白い好きだー
ここから見たらどうだろう?
この人は本当に○○な人か?
全てに疑ってかかるのは良くないとはいえ、この複眼的思考はつい忘れがちになるので自戒を込めて心に刻んでおこうっと
とりあえず音楽と空気の質感も大好き!!
いいね、こういうの。
マーラーもこの映画全体のじっとりした重厚感も本当に好き。
でも音量上がったり下がったり爆音になったと思ったら、会話シーンは聞こえない笑
ちょっと忙しかった;
長さに関しては分割して見たら随分楽でした
これ絶対長さによって満足感変わるよね
キラーズオブフラワームーンよりよっぽど虚無感なく観られました。
「あぁなんかいっぱい殺されてて白人優位世界を描きたかったんだよねーお尻痛いな…あぁ…」みたいな肉体的に死にながら観ていたので映画館でなくて良かったかもしれない笑
セッション同様、クラシックと人間の性を剥き出しに描いてるの嫌いじゃない。