Junichi

映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズのJunichiのレビュー・感想・評価

4.0
「身の丈以上のものはいらないんだ。少しづつ自分のできる範囲で、お世話になった人に恩返しできればそれでいいんだ。」

【作画】6
【演出】7
【脚本】9
【音楽】9
【思想】9

フォローしているmayumayuさんにおすすめされて
TVアニメは視ていなかったので
劇場で初鑑賞です

劇場には春休みということで
圧倒的な中高生の数
しかしこの作品
深夜の大人向け(とりわけ40代、50代)ではないかと思います

主人公のタクシードライバー小戸川
彼と乗客の会話が
悲壮的でユーモアがあってセンスよいです
この作品は
小戸川の会話を楽しむものでしょう
2時間ほぼ言葉の洪水です(笑)

人間嫌いな人は
根底では人間が好きだし
人間に関心があるし
誰かを好きになった経験がある人です

人間のことを好きにならなければ
人間嫌いになることはできません
小戸川はそのような人物

人間を好きになることで
人よりもたくさん傷つき
裏切られてきた人たち
そんな人たちが人間嫌いになります。

人間嫌いな人は崇高な精神の持ち主ということです

以下
物語の終末のネタバレになります
これから観に行かれる予定の方はお気をつけください









登場人物たちはかわいらしい動物で描写されています
いわゆるアニメ的な演出です
動物であることに理由がありました
物語の流れから
途中で予想はできました
(小戸川の高次脳機能障がい)

アニメ的お約束に反抗するのは
押井守監督『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』を思い出します

回収することを前提とした伏線の張り方で
伊坂幸太郎の小説のようで
自分には素っ頓狂な感じがしました
回収することが義務化しているような…

リアルな人生は
回収されることのない伏線の誘い

また登場人物たちが
ただただ救いのない設定で
とある事件も
現代のショービジネスの闇しかなく
(いまは映画界でもものものしいですが)
物語の結末もハッピーエンドと言えるのか分かりません
小戸川が仲間たちと花見をする絵がエンディングで流れますが
唐突な感じもしました

あとは
ダイアン演じる漫才師の立ち位置(物語・事件とどうかかわるか)がよくわかりませんでした
北野武の『キッズリターン』のような立ち位置でしょうか?

とはいえ
上質な会話劇に浸れる2時間です
即物的な会話に疲れている大人におすすめします
Junichi

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