せっ

映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズのせっのレビュー・感想・評価

3.6
意志のない奴が勝ち。

練馬区女子高生失踪事件が発生するさなか、平凡なタクシードライバー、デビュー直前のアイドル、裏社会の勢力、警察、、色んな人たちの思惑が交錯していく話。

どうしても2時間に凝縮すると事件の話がメインになるので、独特の会話劇が少なくなるのが残念だった。『セトウツミ』や『ブラック校則』でも脚本担当(原作者)の此元和津也さんって、ずーっと小ボケをかますオフビートの会話劇が脈略もなく続けられながらも、物語は確実に裏で1本通っているのが持ち味だと思うので、元々11話あるものをキュッってするのは向かない作品なんだろうな。

ただ、登場人物達が誰かの取材に応じる形で事件について語っていくので、全体の話を整理出来たのが良かった。特に、アニメをサラッと見た後だとヤクザを現代日本でこんなにちゃんと力のある悪として登場させるの安易すぎんかと思ったけど、ドブもヤノも他の登場人物達(大学生YouTuber、アイドルなど含め)と変わらないんだなと思った。

基本的に此元和津也さんの作品って強い意思のある多少熱苦しい奴と、なにか物事を常に達観して見ている冷めた奴が出てきて、前2作はその冷めた奴が熱い奴によって何か少しの変化を起こす話(『ブラック校則』についてはうろ覚えなので間違ってたらごめんなさい)だったけど、今作は逆。

ヤクザやアイドル、バズりたいYouTuberなどそれぞれが自分の目的に向かって能動的に動く中、小戸川はずっと受け身。小戸川が動くのは他人のため。自分のためには動かない。でも最後ちゃんと1つの幸せに行き着く。もう1人能動的に動かない奴、ホモサピエンス馬場も何だかんだ成功している。私も夢や目標がない人間として、あぁなんかいいなって思った。

ドブやヤノも強い目的はあるもののそこに大きな信念や夢や憧れはなくて、それが純粋悪としてのヤクザと、夢や憧れに取り憑かれた普通の人の狂気、との対比にもなってて、割とヤクザの立ち位置って物語の構造上上手く機能している感じがした。

あとは声優で芸人さんが沢山出てるけど、これ劇中で反社との繋がりが発覚する師匠とかミキが声担当の大門兄がドブと癒着してるとか、これ吉本自分で過去のことイジってる?と思った(笑)
せっ

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