ぶっきらぼうなケイコ、闘志剥き出しのケイコ、フッとした瞬間に笑うケイコ。
耳が聞こえない女性ボクサーのケイコが見せる表情は、一見すると淡々としているが、その中にも強弱があってとても豊かに見える。
毎日毎日似たような練習を積み重ね、そうやって一歩ずつ前に進んでいくケイコは、私たちの生き方そのもの。前に進むのに劇的なイベントは必要なく、日々の積み重ねこそが前進であると見せてくれる。
岸井ゆきのはボクシングシーンも含め、言われなければ岸井ゆきのと分からないぐらいの溶け込み方。まさに全身全霊で演じていると言うのはこういうことか。今のこの世代の女優では間違いなくトップではないだろうか。三浦友和の演技も味があってよい。
フィルムの映像も良いし、主人公が聴覚障害者だからこそ、スクリーンから出てくる音の一つ一つが良い。良い映画でした。
