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ケイコ 目を澄ませてのhebのネタバレレビュー・内容・結末

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

劇伴がほぼ無い代わりにミット打ちやフットワークの音、生活の中での環境音が印象的に響く張りつめた空気感。
その中でほとんど言葉を発さないケイコが今何を考えているのか、表情や仕草から必死に読み取ろうと思わずスクリーンに集中してしまいます。
試合のシーンよりもずっと彼女の日常の方に意識が持っていかれてしまうのは、彼女がなぜボクシングを続けているのかなかなか分からないから。
終盤になってようやくそれらしいものが見えてきますがやはり決定的な描写でその理由が語られることはなく、相変わらずこちらが想像して彼女の想いに寄り添う事しかできません。

「結局人は一人じゃん」劇中こんなセリフを手話で交わす場面もありましたが、しかしジムの会長や最後に出会うあの対戦相手との不思議なつながりの様なものも確かに描かれていて、それがどこか前向きなラストへとつながっていきます。

様々な事情を持った人達が暮らす世界のほんの一部分を、研ぎ澄まされた音と映像で切り取った様なとても身体的な作品でした。
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