灯火

ケイコ 目を澄ませての灯火のレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.1
静かだけど存在感のある映画だった。
最近、気分が落ち込む時は永井玲衣さんの本を呼んでいるんだけど、彼女と同じような優しさというか、一緒に付き添って悩んでくれるような暖かさがあると思った。
一時的な高揚や悲劇があったって変わらず明日が来る中で、どうして明日も生きるんだろうとか、続ける意味ってなんなんだろうっていう「問い」を、その答えを押し付けるわけではなく、あくまで提示するにとどめてくれているのが心地よいと思った。
僕は漠然とした問いに対して明確な答えが欲しいのではなくて、一緒に悩んで、その渦の中で肩を抱き合って共に生きたい。それが明日も生きるということなのかもしれないと思った。
フィルムで撮影された映像の質感や、劇伴音楽を取り入れずに環境音を強調して載せていたのも、映画に没頭するのに役立っていた。特に後半はそれがうまく機能していたと思う。
ただ映画においてろう者の会話を表現することの難しさも感じた。どうしても字幕の画面になると一歩距離をとってしまう感じがする。森田芳光の(ハル)を観た時も同じように思ったな。耳が聞こえないということに対して安易に「わかった気になる」ことを防ごうとする一方で、興行としての意味を求められる映画のわかりやすさをどこまで追求するか、また観客をどこまで信頼するかっていうことだと思う。
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