このレビューはネタバレを含みます
効果音は入れず日常の音のみ。
だからこそ、音が聴こえない日常でのふとした瞬間のケイコの心情を想起させられる。
三浦友和はドラマ『クロサギ』もそうだったけど、近年は怒らないボス的な役が多いよね。
穏やかなんだけど実は怖いとかのありきたりなキャラクター造型でもなく、
物腰落ちついていて相手の力になっているようで力になりきれないみたいな。
頼りなくもなく強くもない。
つかみどころがないけど怪しくはない。
キャラが濃くなりすぎないボス像で独自の存在感築いている印象。
岸井ゆきのは連ドラで少しコミカルな味のある相棒役的なイメージだったので、この映画でのシリアスな役柄には驚いた。
野獣のような目つきで挑んだ試合の後のマスコミの写真撮影でうまく笑えないケイコが
後半の大きな鏡の前での二人の練習場面では自然にかすかな笑みがこぼれたり、
ラスト込み上げてくる涙をこらえる姿はグッとくる。
感動を極端に煽る演出はなく、
ボクシングに身を置きつつ言葉にならない葛藤と情熱を内にまとっている
ケイコの姿を美化せず俯瞰的な目線で描ききっていたのが良かった。