しちれゆ

ケイコ 目を澄ませてのしちれゆのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.0
ケイコのいつも不満げに尖らせた唇や険しい眼差し。涙をいっぱい溜めた瞳。絞り出すように発せられる「はい…」という言葉。ケイコにとってはボクシングへの熱量がそのまま生きることの熱量だったはずなのにいつしかその心は揺らぎ始める。彼女はボクシングを通し音のある世界に対して戦いを挑みながらも悲しい諦めと 孤独に生きることへの覚悟を持っていた。
古くオンボロなジムとケイコの毛玉だらけのコート。ここに出てくる人たちはギリギリのところで踏ん張っている。時代の変化とか歳を取っていくこととか、抗えない時の波の中に沈んでいきながらも尚ケイコに寄り添おうとしてくれる人々。踏ん張っているのは自分だけじゃない、むしろ彼らによって自分は支えられていたのだと気付いた時 再びケイコは走り始める。豊穣なる音の無い世界で新しく生き始める。
岸井ゆきの圧巻でした。周りの人たちも皆さん素晴らしかった。
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