このレビューはネタバレを含みます
気がついたらボロボロ泣いてた。
不器用で、無愛想で、人とうまく関わることができない。
だけど、人が嫌いなわけじゃない。
そんなケイコの生き様にとてつもなくグッときた。
劇中にあるのは音だけで、BGMが一切ないのが静かで凛としていてすごくよかった。この映画を何倍も素敵なものにしていたのだと感じる。
【感じたこと】
・手話について、黒い画面に白文字で翻訳しているときと、画面下に翻訳をしているときと、全く翻訳されていない時があったけど違いはなんだろう。
本音かどうか、本心かどうか、ということ？
・縄跳び、ボクシング、電車、声援、たくさんの音の中で、ケイコ視点の無音がないのが印象的。この音、ケイコには全部聞こえないんだよね。
聞こえないケイコの日常が淡々と描かれる。だからなのか、劇中のどのシーンにも、ケイコに自分を投影することは不思議となくて（というかできない）、あくまでも第三者目線で見ているような、そんな感覚。
それがケイコの孤独さを際立たせていたと思うし、人の感情がずっとわからないって、こんなにもみてる側を淡々と傍観者にしてしまうのだなぁと思った。
ずっと音があるのに、静かな映画だった。
・劇的ななにかを得るわけじゃない。誰が観ても見どころというような感動シーンがあるわけでもない。ノンフィクションのような、ケイコの人生の一部を切り取ったみたいな映画だった。
・ケイコにとってボクシングは自分の感情を表現する場所の一つなのだろう。
【好きなシーン】
・鏡の前で会長と一緒にシャドーボクシングをして涙ぐむケイコ。
・最後の試合で雄叫びをあげるケイコ。
・最後に微かに聞こえる縄跳びの音。
・夕空
・日記を会長の奥さんが読むシーン。
・会長の帽子をこっそり被り直すシーン。
・ことごとく周りの空気から浮いているのに、全く嫌な感じがしないケイコの出立。
・ぎっしりな番号が書かれためもにひっぱられる線。やめていった人間にひっぱられる線。
・日の光の中で舞うリング側の埃
・上映直後のミット打ち
なんとなくで始めたものが、自分の中でかけがえのないものになっていた。
その心の変化と過程が美しく丁寧に描かれていたと思う。気持ちが澄んでからの、ケイコの表情や他者との関わりが微笑ましい。
最後のケイコの表情だけ、自分の中で解釈の仕方が迷子。
