憲

ケイコ 目を澄ませての憲のレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.3
岸井ゆきのさん、三宅唱監督のそれぞれにとっての代表的になると思う。

この作品は主演の岸井ゆきのさんの全てを掛けて作り上げた魂の作品だと思ったし、こういうのが役を愛して役に生きるということなんだと教えられた。
それは三宅監督の作り上げた世界観も同じで、あえて16mmのフィルムで作り上げた映像がとても心地よくて、最近の映画や大掛かりな映画は鮮やかで美しくダイナミックで、それはそれで迫力も見応えもあるけど、この映画はこのくらいでちょうど良い。本当に、このぐらいが、いい。それが見えててそれを撮りたくてカメラを回してる監督さんは天才だなって思った。そしてそれだけ作品への愛も感じた。
それによって音がない世界に音がない美しさが生まれてくるのを感じれた。

目が本当に役になってて狂気であり凄かったし、魂の声を上げた時は鳥肌ものだった。

聴覚がない世界で生きてきたケイコに取っては当たり前のことが観ている側からすると全く違う感覚で生きているし流れている。それを感じてみないと見ている世界や自分自身の視野は変わらないのかもしれない。

日本映画の良さと劇場から漏れ出る匂いと空間、音に鼓動が高鳴った。

自分や周囲の多くが聴者であることを何度も自覚すること、そうではない人がいるということを意識し続けることを考えなければと思った。

三浦友和さんが渋くて本当にカッコいい。
三浦友和さん演じるジムの会長が、インタビューでケイコについて語っているシーンで、「ケイコは才能はない、小さいしリーチもスピードもない、でも人間としての器量がある」みたいな事を言っていて、それがジワーっと胸に深く刺さった。

エンドロールが凄く良くて脳裏に残った。
憲