憲

渇愛の果て、の憲のレビュー・感想・評価

渇愛の果て、(2023年製作の映画)
3.7
知ることは優しさへの第一歩

当事者の女性にしか分からない立場と痛み、見守ることしかできない男性の苦悩、それぞれの想いが平等に優しく描かれているからこそ重くなりすぎず共感して観ることができた素晴らしい作品だった。
自分だけでは辿り着けない考えや気持ち、行動はやはり人から気づかせてもらったり教えてもらえることってたくさんあるって本当に思わせてくれた。
観た後に、ネガティヴな感情よりもポジティヴな、アクティブな感情に向かえる考え方を示してもらえる作品。
現実で自分の元に起こり得るかもしれない問題に真っ向から向き合い、人との会話の中で紡いでいく丁寧な描写。
デリケートな部分にも踏み込み、本音で会話と対話をするからこそ届くメッセージ性。
どれもこれもが知識や情報だけでなく反応と行動で考えさせられる、とても現実に寄り添う作品だった。
たまに鹿殺しテイストの演出が入ってクスッとなるところや、関西弁が飛び交うテンポ感と心地よさがなんとも気持ち良くさせてくれる。これは関西弁だから成り立つ部分が大きいなと思って、方言の持つ力強さを改めて感じた。

女性が考えていることや欲しい言葉と、男性がする行動や悩みや葛藤、この部分がとてもリアリティがあり丁寧に描かれていて刺さった。
アフタートークを聞いてこの作品の向き合われ方、台詞の生まれた経緯、各方面への取材や探究心追及心、それぞれの想いを知ることができてより理解を深めれて良かった。

自分が今まで生きてきた中で、たくさんの助けてくれた人の顔や言葉が浮かび上がる。一人で出来たことなんてあるんだろうか、そのくらいいつも人に助けられて支えられて生きていると改めて思う。
この作品を観て、自分の事や周りの大切な人の事を考えて誰かの支えになれるような、そんな自分でありたいと思う。

未来への選択肢や、この作品を観たことによって少しでも準備と心の余裕が持てると思える、とても良い作品でした。
憲