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ケイコ 目を澄ませてのペコのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
3.6
聴覚障害のあるプロボクサーと、視力を失いつつあるトレーナーとの絆を描いた本作。障害や心の葛藤に悩むケイコを演じた岸井ゆきのの演技が素晴らしかったです。大きな展開があるわけではありません。プロボクサーとして練習に励むケイコ。聴覚障害の壁に悩むケイコ。トレーナーとの関係性に悩むケイコ。生きていくうえで壁にぶつかる1人の女性の姿を追ったドキュメンタリー作品を観ているような感覚でした。聴覚障害者の方ならではの苦悩であったり、周囲の人々との関わり方を考えさせられました。「勝手に人の心を読まないで」と伝えるケイコが印象的でした。ボクシングが彼女の唯一の自分らしくいられる道だったのだろう…それを手放すことは相当な覚悟があったはず。自分の生き方は自分で決める。障害あるなし関係なく、ケイコに共感できる人は多いはず。辛い…今いる場所から逃げ出したい。でも諦めたくない、自分に負けたくない。人生は勝者と敗者に分かれるわけではなく、自分なりの答えを出すことの大切さを感じました。物語が進んでいくにつれて、声を発しなくても、音や体の動きや文字で伝ってくる彼女の心の声が少しずつ分かってくることが嬉しかったです。それだけ岸井ゆきのの演技が素晴らしいということ。淡々とした地味な映画であることは否めないが、たしかに目を澄まして観たい映画でした。
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